ミスが多くてボロボロだったHSPの会社員が表彰されるまで
03.仕事のミスでボロボロだったのでストラテラを飲んでみた
前回の続き。
ストラテラを飲んでみて、明らかな効果を実感した話です。
病院に行ったのは土曜日だった。
その日から薬を飲み始めた。
青いカプセルの薬、1錠。
土日は仕事が休みだったせいか、何の変化も感じなかった。
こんな小さな薬で、本当に変わるのか?と思った。
月曜日、おそるおそる会社へ行く。
いつものように自分のデスクに座ると、なんだか違和感があった。
会社が静かだ。
いや、周りはいつも通りだ。
「やけに静かに感じる」のだ。
特に、電話に出たとき、それを強く感じた。
いつもは周囲の声や音がすると、そちらに気をとられて、電話に集中できずにいたのだが、その日は全く違った。
電話の相手の声が、内容が、まっすぐ頭に入って来る。
「聞きたい」と思う情報だけを、認識できる感覚。
こんなことは生まれて初めてで、驚いた。
そして私は毎朝、経理の仕事で金庫を開ける。
うちの会社の金庫はダイヤル錠で、(例)21を5回→4を6回→35を2回というように回していくのだが、私はこれがすごく苦手だった。
周囲の話声がしたり電話の音が鳴っただけで気が散ってしまい、
どこまで回したのかすぐに分からなくなって、何度もやり直すハメになるのだ。
でも、その日は違った。
自分が頭の中で数えている数字だけに、意識を集中させることができた。
この金庫、開けるの簡単だ!と思わず感動してしまった。
こうして書くと、「それだけのこと?」と思われるかもしれない。
でも、私にとっては人生がひっくり返るくらいの衝撃だった。
私はこれまで、「これに集中しよう」と決めても、できないことが圧倒的に多かった。
何か別の情報が目や耳から入ってくると、一気に集中がそがれてしまう。
だけど、それが脳の神経伝達物質のせいだとは、微塵も思っていなかった。
ただ「集中力がない」「意志が弱い」せいだ、と決めつけていた。
でもそれは違うのかもしれない、とはじめて思った。
その日、家に帰った私は、薬の効果に半信半疑だった。
たまたま、体調が良かっただけなのかもしれないし。
けれど、翌日からもその状態は維持されていた。
そして、1ヶ月が経った。
それまで、ほぼ月イチで書いていたミスの報告書を1枚も書いていないことに気付いた。
その上、日々の業務で起こるちょっとしたミス、例えば「やり忘れ」や「伝達漏れ」「記入漏れ」といったミスも、格段に減っていた。
薬を飲み始めたときは、多少はプラシーボ効果があるのだろう、と思っていたのだが。
さすがにここまで仕事のしやすさを実感してしまったら「薬の効果」だったと認めざるを得ない。
1ヶ月後、精神科を予約した日がきた。
「こんにちは~」
診察室へ入ると、初診の時と同じように、明るく挨拶をされて気が抜ける。
「薬はどうでしたか?」
「ミスがほとんど、なくなりました。
仕事がやすくなって驚いてます」
「そうですか~、じゃあ薬が合っていたんですね。
合わない人もいますから。よかったですね」
副作用がこれといって感じられなかったので、薬を少し増やすことを提案された。
帰り際、先生に
「たくさん自分が楽しいと思うことをして下さいね」と言われた。
あっけにとられ「あ、はい」とだけ返事をした。
楽しいことをしてね、なんて、人に言われたことがなかったな。
そして、自分に対して思ったこともなかった。
「もっとちゃんとしなきゃ」「能天気に楽しいことばかりしててはいけない」
そう考えてばかりいた。
私は私に対して、すごく厳しかったのかもしれない。
病院からの帰り道、そんなことを考えた。
薬代は上がったが、効果を実感できたので、初回ほど「高い」という気がしなかった。
なんだか、1か月後が楽しみだ。
未来のことを考えて明るい気持ちになるのは、本当に久しぶりだった。