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ミスが多くてボロボロだったHSPの会社員が表彰されるまで(2)

ミスが多くてボロボロだったHSPの会社員が表彰されるまで

02.ADHDかもしれない?精神科へ行ってみよう

前回の続きです。

 

ADHDに関する記事を読んで他人事だと思えなかった私は、

とあるサイトで、ADHDの自己診断チェックを行った。

該当項目が多かったので、同サイトで専門医として紹介されていた精神科へ電話をしてみた。

すると、新規の患者は1ヶ月待ちだという。精神科、大人気である。

驚きつつも、とりあえず予約を入れる。

 

そして1ヶ月後。

人生初の精神科である。

おそるおそる、建物に入る。

土曜日だったこともあり、待合室にはたくさんの人がいた。

そこにいた人々は、20~60代くらいまでの幅広い年齢の男女だった。

なんというか見た感じ「普通の人ばかりだな」と思った。

ここに来るまで、精神科というのは見るからに「やばい人」が行くところだという先入観があったのだ。

普通に生活をしているように見えても、人はいろいろな悩みを抱えているものなのだな。

待合室で緊張しながら、そんなことを考えた。

しばらくして名前が呼ばれる。

入室すると、そこには黒縁メガネをかけた40代くらいの男の先生がノートPCを開いて座っていた。

「こんにちは〜」

場違いにも思えるような、気の抜けた挨拶をされる。

先生の机の横に大きな椅子があり、そこへ着席すると

「今日はどうされましたか」 と言われた

なんか、内科みたいに聞くんだな。

 

私は、仕事でミスが多くて悩んでいること、休日も仕事のことを考えてしまい心が休まらないこと、気持ちが塞ぎがちなことなどを話した。

プライベートでも、忘れ物や部屋の片付けに悩んでいて、そんな自分をどうにかしたいと思っていることも打ち明けた。

 

思えば、この悩みを誰かに話すのは初めてだった。

いつも笑って誤魔化していたから。

話をしながら、どんどん緊張が高まって鼓動が早くなる。

この苦しみを、笑われたり、一蹴されたりしたらどうしよう。

ミスばかりする自分の不甲斐なさと、曝け出すことの恐怖、初めて人に打ち明けたことへの安堵感。色々な感情がない混ぜになって、知らず知らずのうちに、話しながら涙が溢れてきた。

終わって、しばしの沈黙。

やがて先生は、こう言った。

「大丈夫です。あなたは頑張ってきたじゃないですか。

 大学も卒業して、社会人になって、立派にやっているじゃないですか」

今思えば、先生の言葉はすごく温かくて、いい言葉をかけてくれた。

しかし、当時の私がその言葉を聞いた率直な感想は「えっ?」だった。

自分が「頑張ってきた」なんて夢にも思わなかったので、心底意外だったのだ。

自分の苦しみを打ち明けたら「だからお前はダメなんだ」と叱られたり責められたりするものだと思い込んでいた。

それまでずっと、他人と自分を比べて自分の悪いところばかりを見つけては、自分はダメだと言い聞かせてきた。

過去の自分がどう頑張ってきたかなんて、考えもしなかった。

暗闇に一筋の光が差した、というよりも

真っ暗な部屋のカーテンを全開にされて、まぶしさのあまり何も見えなくなるような感覚だった。

 

その後もしばらく話をして、先生は「気持ちが楽になる薬で様子をみましょうか」と言った。

ん?それって精神安定剤とかのことか?と思って、

「先生、自分はADHDかもしれないと思って、こちらに来たんです」

と言ってみた。先生は、

「ああ、そうだったんですか。私ももしかしたら、と思ってはいたんです」

と言われ、ストラテラという薬を勧められた。

ストラテラは、脳の神経伝達物質を調整する薬で、ADHDの不注意や多動に効果があるそうだ。

覚悟はしていたものの、自分が発達障害かもしれない、と先生に言われたのはショックだった。

でも、同時に少し安堵してもいた。薬で何かが変わるかもしれない、という希望を見つけた気がした。

「AHDHの治療薬ということは、私はやはり発達障害なんでしょうか」

「ADHDと発達障害は、厳密にいうと違うものなんです。

ストラテラは、不注意を減らす効果があります。

この薬が効いたからといって、必ずしもADHDである、というわけではありません。

古志さんの困りごとは、注意欠陥だけのようなので、僕はADHDではないと思います。

ADHDの方は多動があったりする方が多いのですが、古志さんは当てはまりませんよね。

薬を飲んで様子を見てみましょう」

 

つまり、私はADHDではなかった。

不注意が多いだけの人間であったということか。

なんだか拍子抜けしてしまった。

 

ストラテラは高かった。

最初は低用量のものだったけれど、それでも1ヶ月分で5千円近くした。

内科で薬を処方されたことはあっても、向精神薬を飲むのは初めてだった。

薬に対する抵抗感はすごくあった。

強い副作用が出たら、どうしよう。やめられなくなったら、どうしよう。

葛藤はあったが、今の悩みを解決する特効薬になるかもしれない。

5千円を払ったあとは腹を括った。

大枚叩いて買ったヤクだ。飲むしかない。

 

薬局を出て駐車場へ戻る道すがら。

両脇に、花壇があったことに気づいた。

 

たときも同じ場所を通ったはずなのに、焦りと不安でいっぱいで、花なんか全然見えてなかった

よく手入れされていた花たちの間を、俯いて歩いた。

小さな花々に見送られているようで、くすぐったい気分になる。

 

車に乗り込んで、エンジンをかける。

久しぶりに涙を流したので、目の奥はぼうっと重たい。

けれど気持ちはなんだか、穏やかだった。

 

次回、薬(ストラテラ)の効果は?飲んでみたらこうだった!編。